肌は加齢により状態が変わります。そのためツヤやハリがあるうるおった肌は実年齢よりも若々しい印象を与えますが、このうるおいに満ちたみずみずしい肌の大切な要素となるのがセラミドです。セラミドは誰の肌にも存在する成分で、肌の角質層に存在します。角質層は外部からの刺激や摩擦、紫外線などから肌を守る役割があり、ここで細胞どうしの水分を繋ぎ止めてうるおいを与える役割を果たします。 肌のバリア機能が正常に働き、乾燥しにくくなるだけでなく、肌のキメが細かくなり、毛穴が目立たなくなるなど美肌に欠かせない重要な役割を果たすセラミドを充分に保ち、しっかりと機能させることが大切です。
人の美を表現する言葉は「美人」「美肌」「美容」「優美」「美白」なと数々ありますが、これらはすべて人の肌を見た時に脳が感じる表現で、健康的な肌を美しいと認識するのです。ぶるんと弾力のある肌。キメが整った、透き通るような透明感のある肌。私たちの見た目の美しさは、肌の角層といういちばん外側の部分で決まるといえます。 角層が健康であるためには、角層のすみずみまで水分が充分に満たされることが大切です。なめらかで健やかなコンディションを保つことで、見た目にも若々しく、みずみずしさを保つことができます。
角質層では角質細胞がきれいに並び、ひとつひとつの細胞と細胞の間が、セラミドなどの角層細胞間脂質で埋められ、しっかりしたバリアを形成しています。アレルゲンなど外部刺激を跳ね返し、角層内の水分蒸散を防ぎ、水分も保たれ、みずみずしい肌を維持します。このようにセラミドは角層内部の水分をつなぎとめる「保湿機能」と、肌の内部から水分蒸散を防いで外部刺激から守る「バリア機能」という大きな役目を担っています。
セラミドなどの細胞間脂質が不足してくると、レンガのように積み重なった角層細胞の並びが乱れてすき間ができて、バリア機能が働かなくなります。角質層のすき間から外部の刺激物が侵人し、角質内の水分も蒸発して、肌の潤いがなくなってきます。 乾燥による影響は、肌荒れ、乾燥ジワ(小じわ)、かゆみ、皮膚を掻いたり衣服との擦れによる肌の赤み、そのあとの炎症が残るシミ。すべての肌トラブルに関連するひとつが乾燥です。
私たちの肌は皮膚表面からたった20ミクロンの角層で守られています。表皮のターンオーバーで、表皮細胞が健全な角質細胞(ケラチン)と細胞間脂質(セラミド)をつくるまで、14日間を要します。角層は15層積み重なり、下から順に押しあがり、正常なら14間で剥がれていきます。角質細胞はレンガ、角質間脂質はレンガをくっつけるセメントで、肌は「壁」のようなものです。しかし、肌は単なる「壁」ではありません。体の動きに合わせ弾力性や柔軟性が必要です。外敵が侵入できない強固であると同時に、柔軟性という相反する条件が必要となり、さらにこれは毎日代謝し、新しく構築されています。この高度なセメント役の主成分が「セラミド」です。
皮膚で創られるセラミドの出発点はアミノ酸(セリン〉と脂肪酸(パルミチン酸)です。有棘細胞上層部で小胞体内の酵素作用により、アミノ酸が脂肪酸を取り込み、セラミドの基本構造である「スフィンゴシン」が創られます。この反応を「アシル化」といいます。さらにターンオーバーの過程でセラミドが合成され上層部の顆粒層に移行し、顆粒細胞が角質細胞に変身する時、細胞外周辺に分泌されます。放出されたセラミドは水分子を包含し、ラメラ構造を形成すると同時に、角質下層部に密着して、バリア機能を担う角質間脂質となるのです。 セラミドと水分子が交互に層状に配列された状態を「ラメラ」構造と呼び角質層独特の保水講造となります。
角層は角質細胞が15〜20層も積み重なり、そのすき間をセラミド等の細胞間脂質と水分子が交互の層状に並んだ多重層構造で埋められています。この多重層構造が細胞間脂質の保水構造で「ラメラ構造」と呼びます。角質中の結合水分量30%の内、15%以上は角質間のラメラ構造中に保たれています。 ラメラ構造がきれいに整うことで角質内の水分がしっかり留められ、乾燥状態でも蒸発することなく、うるおいに満ちた健やかな肌が保たれるのです。また、ラメラ構造が保たれることで、外部刺激に対するバリア機能を発揮します。
ラメラ構造によって組み込まれたセラミドに抱えられた水は結合水と呼ばれ、摂氏0度以下で凍るとは異なり、-40℃でも凍らないという性質があります。また、結合水は極度の乾燥下でも蒸発されない性質があるため、ラメラ構造が整っていると、湿度や気温が下がる真冬の過酷な状況でもセラミドに抱えられた水分は蒸発せず、うるおった肌を守り、維持することができます。
セラミドは表皮の最下層の基底層でセラミドの前駆体が出来てターンオーバーとともにいちばん外側の角層へと押し出されつつ、その過程で角層細胞の間でセラミドとして水分を保つ機能を発揮するように変化していきます。 ターンオーバーが乱れると、セラミドはうまくつくられずに全体量が減少し、乾燥が進んでしまう原因になります。さらに肌本来のバリア機能も低下し、細胞分裂が亢進した結果、ターンオーバーが乱れ、セラミドの代謝が滞ってさらに乾燥が進むという悪循環が生じ、肌の水分をますます保てなくなります。 ターンオーバーを乱す原因は、加齢によるもの、紫外線など外からの刺激だけでなく、睡眠不足やストレス、ホルモンバランスも影響しています。セラミドで満たされたうるおった肌を保つためには、規則正しい生活習慣も大切なポイントとなります。
セラミドはアミノ酸と脂肪酸を合体させ、糖やリン酸を取り込みながら複数の酵素で約14日間かけで生合成されます。しかも弱酸性であることが条件です。セラミドはホルモンと違い年齢による分泌量の変化に男女の差はありませんが、加齢により酵素や弱酸性の力が衰えるとセラミドの合成量は低下します。50歳代では10代の約50%にまで減少するといわれ、日々のケアの中でセラミドをしっかりと補うことが大切となってきます。
強力な洗浄剤や石鹸を使うことで、皮膚の表面にあるセラミドを取り除いてしまうことがあります。角層からセラミドが流れ出し、水分をつなぎとめるチカラが低下してしまいます。そうするとセラミドは本来の機能が発揮できずに、肌はどんどん乾いていきます。これにより、肌のバリア機能が低下し、セラミドの減少を招くことがあります。
紫外線は肌のセラミドを減少させることが知られています。長時間の紫外線による曝露は、肌のバリア機能を低下させ、セラミドの減少を招くことがあります。
水分はその状態によって“自由水”と“結合水”の2種類あります。自由水は普通に存在している水で、摂氏0度以下で凍る水です。また乾燥下ではすべて蒸発する水です。一方、結合水はセラミドなどによりラメラ構造に組み込まれた水です。ラメラ構造の中でしっかりと結合されて動けないため、氷の結晶を作れず-40℃でも凍らない水(不凍水)で、もちろん極度の乾燥下でも蒸発できない水です。 正常な角層に存在する30%の水はすべて不凍水(結合水)でこのため人間が−40℃の環境でも顔を外にだして活動できるのは、角層に存在する水はすべて不凍水(結合水)であるためです。もし角層に存在する水が凍る水であると、凍結により体積が膨張し角層の構造が破壊されてします。 したがって乾燥下で本当に保湿力のある水分は結合水です。普通の化粧水や乳液に配合されている保湿剤は結合水ではなく自由水を保つ機能があります。一方、結合水をしっかりと保持できる保湿成分はセラミド以外には知られていません。
肌の表面はしっとりしているようでも、セラミド不足で水分をつなぎとめる力が弱まっていたら、すぐに乾燥してしまいます。 スキンケアで水分を“与える”だけでは、水分は肌からだんだんと蒸発してしまいます。しっかりと潤いケアするには肌そのものが水分をしっかりとつなぎとめる力を育む必要があります。角層の細胞の間にあるセラミドをきちんと機能させて、水分を結合水として沢山保持して、水分が逃げ出しにくい肌を保つケアが重要です。
なめらかで、ふっくらハリのある若々しい肌の目安となるのが肌の水分量です。肌表面の角層に含まれている30%の結合水のうち約半分以上を抱えているのがセラミドなどの角層細胞間脂質です。残りの15%は角層細胞を満たしているケラチン繊維に結合しています。肌の結合水量を効率的に上げて、潤いで満たすには、セラミドをいかに増やすかがポイントです。乾燥や肌ダメージを招かないためにも、スキンケアで積極的にセラミドを補給することが大切です。